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(2026年10月時点の情報です)
革靴を見ていると「グッドイヤーウェルト製法」「マッケイ製法」という言葉が必ず出てきます。
ただ、これを調べると構造の図と専門用語が出てくるばかりで、「じゃあ自分はどっちを買えばいいのか」が分からないことが多いと思います。私も最初はそうでした。
この記事では、構造の話は必要な分だけにして、買うときに効く違いだけを書きます。結論から言うと、違いが一番はっきり出るのは「ソールを張り替えられるか」です。そしてそれは、公式の商品ページのスペック表の2行を見れば調べなくても分かります。
この記事で分かることは、
- グッドイヤーウェルトとマッケイが、構造としてどう違うのか
- どちらを選ぶべきかを決める、たった3つの軸
- いま持っている靴がどの製法かを見分ける方法
- 同じお店で買える靴を並べたときに、製法と値段と修理可否がどう対応しているか
という感じです。セメンテッド式(接着)も、同じ土俵で比べます。これを外すと話が実態と合わなくなるからです。革製品そのものの選び方から知りたい方は、革製品初心者向けガイドも合わせて読んでみてください。
※価格はすべて税込です。記事内の価格は2026年10月時点で各ブランドの公式サイト・公式オンラインショップに掲載されていたものです。ソール交換の価格はリーガル公式サイトが「2025年3月1日現在」と明記しているものを引用しています。公式サイトの商品画像は引用で、下に出典を記載しています。また、本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。★の5軸評価は、公式に記載された製法と修理可否、その製法の構造的な特性をもとに付けたもので、ブランドの優劣ではありません。断面図と図解は、公式サイトの記述をもとにAIで作図したものです。
先に結論
- 10年単位で履き続けたい人はグッドイヤーウェルト。ソールを何度でも張り替えられるのはこの製法だけです
- 軽さと柔らかさを優先する人はマッケイ。ただしオールソール修理は基本的に1回まで
- 数年ではっきり履きつぶす前提の人はセメンテッド式で十分。紳士靴の約7割がこれで、手抜きではありません
- 迷ったら、買う前に公式商品ページの「製法」と「修理」の欄を見てください。そこに答えが書いてあります
革好き3流エンジニア:この記事を書いているのは、革製品マニアの下っ端エンジニアです。革靴は2017年から履いています。グッドイヤーウェルトのスコッチグレインは6年目に自分で染め替えをして、いまも履いています。製法の話は、長く履くつもりの靴を選ぶときに初めて意味が分かりました。
3つの製法の違いを表で見る
まず全体像です。細かい話はこのあとに書きます。
| 項目 | グッドイヤーウェルト | マッケイ | セメンテッド式 |
|---|---|---|---|
| 底の付け方 | 中底のリブ→ウェルト→本底と、2回縫う | 甲革と中底と本底を一緒に通し縫い | 接着剤で圧着。底を縫う糸はない |
| ソール交換 | 何度でもできる | 1回はできる。2回目以降は難しい | 基本的にできない |
| 重さ | 重い | 軽い | いちばん軽い |
| 曲がりやすさ | 硬い。慣らす期間がいる | 最初から曲がる | 最初から曲がる |
| 足なじみ | 中物が沈んで足の形になる | 革の柔らかさでなじむ | ほとんど変わらない |
| 水への強さ | 縫い目は多いが底が厚い | 内側に縫い目があり、水が入りやすい | 縫い目がないので底からは入りにくい |
| 見た目 | コバが張り出す。重厚 | コバが細い。すっきり | どちらにも寄せられる |
| 価格の目安 | 2万円台〜 | 1万円台後半〜 | 1万円台〜 |
| 向いている人 | 同じ靴を10年履きたい | 軽くて楽な本格靴が欲しい | 数年で買い替える |
この表のなかで買ったあとに取り返しがつかないのは「ソール交換」の行だけです。重さも硬さも慣れますが、張り替えられない靴は底が減ったら終わりです。
製法別の6足を、公式スペック表のまま並べる
一般論だけだとぼやけるので、先に実物を置きます。リーガルコーポレーションの公式オンラインショップとスコッチグレイン公式で、いま買える6足です。スペック表の記載をそのまま写しています。
| ブランド・品番 | 価格 | 公式の「製法」欄 | 公式の「修理」欄 | 原産国 |
|---|---|---|---|---|
| SHETLANDFOX 122F(ダーリントン) | 71,500円 | グッドイヤーウエルト+マッケイ式 | オールソール&ヒール | 日本製 |
| REGAL 01DR ストレートチップ(革底) | 50,600円 | グッドイヤーウエルト式 | ヒール、ソール交換 可 | 日本製 |
| スコッチグレイン アシュランス 3526 | 48,400円 | グッドイヤーウェルト | 公式が「靴底を付け替える修理が可能」と明記 | 日本製 |
| REGAL 68LLBD チロリアンスニーカー | 26,400円 | セメンテッド式 | ヒール、ソール交換 不可 | ベトナム |
| REGAL FH14AB レディース ローファー | 19,800円 | セミマッケイ式(ハンドソーンモカシン) | ヒール、ソール交換 可 | タイ |
| KENFORD KP28C25 ストレートチップ | 16,500円 | セメンテッド式 | 不可 | 中国 |
製法の表記は公式のままにしています(リーガルは「ウエルト」表記です)。1足ずつの紹介は記事の後半にあります。
この表から読めることが3つあります。
1つめ。値段では製法は決まりません。26,400円のチロリアンスニーカーはセメンテッド式で修理不可、19,800円のローファーはマッケイ式でソール交換可です。安いほうが修理できる、という逆転が実際に起きています。
2つめ。1万円台でもソール交換できる靴はあります。「本格的な靴は3万円から」とよく言われますが、修理可否だけで見れば必ずしもそうではありません。
3つめ。併用がある。いちばん高いシェットランドフォックスは「グッドイヤーウエルト+マッケイ式」です。これについては後半で説明します。
グッドイヤーウェルト製法とは
どういう仕組みか
名前が長くて身構えますが、やっていることは「2回に分けて縫う」だけです。
- 中底に「リブ」という細い土手を貼る
- 甲革とリブ、そして「ウェルト」と呼ばれる帯状の革を縫い合わせる(すくい縫い)
- ウェルトと本底を縫い合わせる(だし縫い)
ヒロカワ製靴(スコッチグレイン)の公式サイトは、この工程を12段階で公開しています。リブについてはこう書かれています。

リブとは、グッドイヤーウェルト製法の要である「ウェルト」を縫い付けるための縫い代になる部分。
引用:スコッチグレイン公式サイト「靴の製造工程」
ここが効いてきます。甲革は本底と直接つながっていません。間にウェルトがはさまっています。だから本底を縫っている糸を切っても、甲革には穴が増えません。これが「何度でも張り替えられる」理由です。
もうひとつ、中底と本底のあいだには空間ができます。ここに詰めるのが「中物」です。伝統的には練りコルクを使います。
グッドイヤーウェルト製法ではクッション材として練りコルクを入れるが、コルクは劣化しやすく弾力性が低下するため、ここでは劣化しにくいEVA製のスポンジを使用。
引用:スコッチグレイン公式サイト「靴の製造工程」
この中物が体重で沈んで、自分の足の形になっていきます。「履けば履くほど馴染む」と言われるのは、革が伸びるからというより中物がへこむからです。
強いところ
マドラス株式会社の公式解説では、こう整理されています。
構造的に丈夫で安定性があり、長時間の歩行でも疲れにくい。履きこむうちに中物が足の形状に合わせて沈み中底が変形するので、フィット感が高まります。また表底の取替えが簡単でオールソール修理が何回もできます。
引用:マドラス株式会社公式サイト「靴の素材・製法について」
「何回もできる」がこの製法の本質です。アッパーの革が生きているうちは、底を替えて履き続けられます。私のスコッチグレインは6年目で色が抜けてきたので自分で染め替えをしました。アッパーに手を入れて履き続けられるのは、底を替えられる製法だからこそだと思います。
弱いところ
同じ公式解説が、弱点もはっきり書いています。
しかしその反面、メンテナンス面で高くつくという不利な点や軽さや屈曲性でも限界があります。
引用:マドラス株式会社公式サイト「靴の素材・製法について」
3つに分けると、こうなります。
- 重い。底が厚く、パーツが多いので当然重くなります
- 硬い。買った直後はほとんど曲がりません。慣らす期間が必要です
- お金がかかる。本体も高いですが、張り替えのたびに2万円台から3万円弱かかります
修理費は後半で実際の金額を出します。「ソール交換できるからお得」という話ではないので、そこは正直に書いておきます。重さや手入れの手間も含めて、革の面倒なところは革製品のデメリット9つにまとめてあります。
マッケイ製法とは
どういう仕組みか
こちらは「一気に縫う」です。甲革と中底と本底を、まとめて一度で縫い抜きます。
リーガル公式の商品ページに、分かりやすい説明が載っています。
この製法の特徴をカンタンに言うと、スマートな形、ソフトな足入れ、そして軽量、です。それは甲革と中底と表底を一緒に通し縫いするという、比較的簡単な造りのためです。靴内部の底から甲にかけて、足を包むように仕上げるため、まるで靴下のような感覚でフィットする靴として多くの人に人気がある製法です。
引用:リーガル公式オンラインショップ 商品ページ(FH14AB)
ウェルトを使わないので、コバ(底の張り出し)が細くなります。見た目がすっきりするのはこのためです。底も薄いので、最初から足に沿って曲がります。

強いところ
- 軽い。パーツが少なく底が薄いので、同じサイズならグッドイヤーウェルトよりはっきり軽いです
- 慣らしがほぼ不要。買った日から曲がります
- 柔らかい革と相性がいい。マドラス公式も「柔らかい革材料との相性が良い」と書いています
- 細身にまとまる。ドレッシーな形を作りやすい製法です
弱いところ
2つあります。どちらも構造から来るもので、どのブランドで買っても同じです。
1つめは、ソール交換が繰り返せないこと。甲革に直接針を通しているので、張り替えるたびに甲革の穴が増えます。マドラス公式は、穴が増えると強度が足りなくなるためオールソール修理は2回目以降はできないと説明しています。1回はできる、と読むのが正しい理解です。
2つめは、水に弱いこと。縫い目が靴の内側まで貫通しているからです。マドラス公式はこう書いています。
靴の内側に縫い目があるため、水が浸入しやすくなりがちですが、本底に切り込みを入れて内側に縫込むことで、防水性を高めています。
引用:マドラス株式会社公式サイト「靴の素材・製法について」
対策はされている、という書き方です。雨の日の主力にする製法ではないと考えておくのが安全だと思います。
セメンテッド式を外すと話が合わなくなる
じつは、これが主流です
製法の記事はたいていグッドイヤーウェルトとマッケイの2つで終わります。ただ実際にお店に並んでいる靴の大半は、どちらでもありません。
製造工程が少なく、構造的にも簡単なため量産できます。また、軽く、屈曲性にとんでいます。現在の紳士靴の約70%、婦人靴の90%以上が、このセメント式によって作られています。
引用:マドラス株式会社公式サイト「靴の素材・製法について」
紳士靴の約7割です。つまり「ふつうの革靴」はほぼこれだということになります。接着剤で底を貼る製法で、底を縫う糸はありません。

これを手抜きと呼ぶのは実態に合いません。軽くて、最初から曲がって、安い。1〜2年で履きつぶす前提なら合理的な選択です。雨の日用や、たまにしか履かない1足として割り切るなら、むしろこちらが合っています。
公式が「修理 不可」と書いている
ここが大事なところです。リーガル公式オンラインショップの商品ページには、スペック表に「製法」と「修理」の欄があります。セメンテッド式の商品には、はっきり「不可」と書かれています。
つまり、買う前に分かります。知らずに買って、数年後に修理を断られるのがいちばん損です。
製法別のおすすめモデル6足
ここまでの話を、実際に買える靴に落とします。すべて公式のスペック表に製法と修理可否が明記されているモデルだけを選びました。
5軸の評価は、製法の構造から付けたものです。ブランドの優劣ではありません。
グッドイヤーウェルトで選ぶなら
10年単位で履く前提の2足です。重さと硬さは代償として受け入れる、という選び方になります。

引用:リーガル公式オンラインショップ
REGAL 01DR ストレートチップ(革底)
50,600円(税込)
製法:グッドイヤーウエルト式/修理:ヒール、ソール交換 可/アッパー:牛革/ソール:牛革(革底)/ヒール:革積上げ+トップリフト(ラバー)/ウィズ:EE/原産国:日本製
-
- ①修理のしやすさ
- 5
-
- ②軽さ
- 2
-
- ③はじめの履き心地
- 2
-
- ④雨への強さ
- 2
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 2
この記事で説明してきたグッドイヤーウェルトを、そのまま形にしたような1足です。公式のスペック表に「グッドイヤーウエルト式」「ヒール、ソール交換 可」と並んで書かれています。
ソールが革底なので、張り替えると29,150円(税込・2025年3月1日現在)かかります。ゴム底より高い区分です。そのぶん、はじめから何度も替える前提の作りになっています。
商品説明には底の角を丸く削った「ヤハズコバ」の記載があります。コバが張り出すグッドイヤーウェルトの見た目を、少し上品に寄せた仕上げです。
向いているのは、スーツで週3回以上履く人。革底なので雨の日の主力にはできません。もう1足、雨用を別に持てる人向けです。
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引用:スコッチグレイン公式サイト
スコッチグレイン アシュランス 3526
48,400円(税込)
製法:グッドイヤーウェルト/生産:東京(墨田区)の自社工場で一貫生産/本底・中底:イタリアCMC社のタンニンなめし革/中物:EVA製6mm厚硬質スポンジ/シャンク:オリジナルのプラスチック製
-
- ①修理のしやすさ
- 5
-
- ②軽さ
- 2
-
- ③はじめの履き心地
- 3
-
- ④雨への強さ
- 2
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 2
1964年創業のヒロカワ製靴が、自社ブランドだけを東京の自社工場で作っています。公式サイトが製造工程を12段階で公開していて、この記事の説明もそこから引いています。
特徴的なのが中物です。グッドイヤーウェルトはふつう練りコルクを入れますが、公式は「コルクは劣化しやすく弾力性が低下するため」としてEVA製のスポンジを使っていると書いています。沈み込みの持ちを優先した判断です。
私が最初に買った革靴がこのブランドで、6年履いた1足は自分で染め替えをしていまも現役です。私も所有しており、グッドイヤーウェルトの「手を入れれば続けられる」感覚はこの靴で覚えました。
向いているのは、国産で、作りの中身まで公開しているブランドを選びたい人。価格の確認先:スコッチグレイン公式オンラインストア。
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軽さと細さを両立させたいなら
グッドイヤーウェルトとマッケイを併用した1足です。寿命は残したまま、見た目を細くしています。

引用:リーガル公式オンラインショップ
SHETLANDFOX 122F【ダーリントン】プレーンメダリオン
71,500円(税込)
製法:グッドイヤーウエルト+マッケイ式/修理:オールソール&ヒール/アッパー:牛革(カーフ)/ソール:牛革/ヒール:革積上げ+ハーフプロテクターリフト/原産国:日本製
-
- ①修理のしやすさ
- 5
-
- ②軽さ
- 3
-
- ③はじめの履き心地
- 3
-
- ④雨への強さ
- 2
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 1
公式の商品説明に「SOLE:グッドイヤーウエルト+マッケイ式製法で仕立てた美しいシルエット」と書かれている1足です。2つの製法を組み合わせる理由が、はっきり「シルエット」だと明記されています。
グッドイヤーウェルトはコバが張り出すぶん、どうしても足元が大きく見えます。そこにマッケイを足して、細く仕上げています。
修理欄は「オールソール&ヒール」。張り替えはできます。ただしオールソールは38,500〜49,500円(税込)と、通常のリーガル製品より高い区分になります。
向いているのは、グッドイヤーウェルトの寿命は欲しいが、見た目のもっさり感は避けたい人。価格が上がるのは、工程が増えるからです。
マッケイで選ぶなら
軽くて、買った日から曲がります。張り替えは基本1回までという前提で選んでください。

引用:リーガル公式オンラインショップ
REGAL FH14AB レディース ローファー
19,800円(税込)
製法:セミマッケイ式(ハンドソーンモカシン)/修理:ヒール、ソール交換 可/アッパー:牛革(鏡面加工革)/ソール:合成底(ゴム)/ヒール高さ:20mm/ウィズ:EEE/原産国:タイ
-
- ①修理のしやすさ
- 3
-
- ②軽さ
- 4
-
- ③はじめの履き心地
- 5
-
- ④雨への強さ
- 2
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 4
この記事でいちばん伝えたいことが、この1足に出ています。19,800円でソール交換ができます。公式スペック表の修理欄に「ヒール、ソール交換 可」と書かれています。
製法は「セミマッケイ式(ハンドソーンモカシン)」。モカシンは甲の作り方の名前で、底付けはマッケイ、という組み合わせです。ローファーが軽くて最初から曲がるのは、この構造のためです。
商品ページにはマッケイ式の解説も載っていて、「まるで靴下のような感覚でフィットする靴」と書かれています。慣らす期間がほぼいらないのが利点です。
向いているのは、本格靴の重さと硬さが苦手な人。ウィズはEEEの幅広なので、甲高の人も試す価値があります。
セメンテッド式で割り切るなら
修理はできません。そのかわり軽くて安く、雨にも構造的に強い。用途がはまれば正解です。

引用:リーガル公式オンラインショップ
KENFORD KP28C25 ストレートチップ
16,500円(税込)
製法:セメンテッド式/修理:不可/アッパー:牛革/ソール:合成底(EVA)/ヒール:合成ゴム/ウィズ:EEE/原産国:中国
-
- ①修理のしやすさ
- 1
-
- ②軽さ
- 5
-
- ③はじめの履き心地
- 5
-
- ④雨への強さ
- 4
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 5
リーガルコーポレーションのもうひとつのブランドです。公式スペック表の修理欄は、はっきり「不可」。これを承知で買うなら、何も悪いことはありません。
EVAの合成底で軽く、はじめから曲がります。ウィズはEEEの幅広。2010年の発売以来トップセールスを続けているグループだと公式が書いています。
底に縫い穴がないので、底から水が染みてくる心配は構造的に少ないです。雨の日の1足として割り切るなら、むしろ理にかなっています。
向いているのは、革靴を履くのが週1〜2回の人と、雨の日用を別に持ちたい人。数年で履きつぶす前提で考えてください。

引用:リーガル公式オンラインショップ
REGAL 68LLBD チロリアンスニーカー
26,400円(税込)
製法:セメンテッド式/修理:ヒール、ソール交換 不可/アッパー:牛革/ソール:合成底(EVA+ラバー)/原産国:ベトナム
-
- ①修理のしやすさ
- 1
-
- ②軽さ
- 5
-
- ③はじめの履き心地
- 5
-
- ④雨への強さ
- 4
-
- ⑤価格の手ごろさ
- 4
あえて入れた1足です。26,400円でも修理欄は「不可」。さきほどの19,800円のローファーは「可」でした。
値段で製法が決まるわけではない、という話がそのまま出ています。価格はデザインや素材や生産地でも動くので、修理できるかどうかとは別物です。
もちろんこの靴が悪いわけではありません。EVAとラバーの底で軽く、カジュアルに履ける革靴です。
買う前に「製法」と「修理」の欄を見る。この記事で覚えて帰ってほしいのは、結局それだけです。
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「グッドイヤーウェルト+マッケイ」とは何なのか
2つの製法は、どちらかを選ぶものだと思っていました。ところが上位モデルには、両方を使うものがあります。
SOLE:グッドイヤーウエルト+マッケイ式製法で仕立てた美しいシルエット
引用:リーガル公式オンラインショップ 商品ページ(SHETLANDFOX 122F)
公式が理由として挙げているのはシルエットです。グッドイヤーウェルトの張り出すコバを抑えて、細く仕上げるためにマッケイを組み合わせています。この靴の「修理」欄は「オールソール&ヒール」なので、張り替えはできます。
ここで覚えておきたいのは、製法名がきれいに2択で書かれていない商品があるということです。「セミマッケイ式」という表記も先の表に出てきました。だからこそ、製法名を覚えるよりスペック表の「修理」欄を見るほうが確実なのです。
いま持っている靴の製法を見分ける3つの方法
1.靴の中をのぞく
いちばん簡単です。リーガル公式の説明をそのまま使えます。
靴の中をのぞくと、中底の回りに縫い糸が見えるので、マッケイ式製法であることが確認できます。
引用:リーガル公式オンラインショップ 商品ページ(FH14AB)

中敷きをめくって、中底のふちをぐるりと見てください。縫い糸が見えたらマッケイ系です。グッドイヤーウェルトは甲革と本底が直接つながっていないので、ここに糸は出てきません。
2.コバと、底の縫い目を見る

靴を横から見て、底が外側に張り出していて、その張り出しの上を糸がぐるりと走っていたらグッドイヤーウェルトの可能性が高いです。これが「だし縫い」の糸です。
ただし確実ではありません。マドラス公式も、リブの作り方でコバを引っ込められるので必ずしも出し縫い糸が見えるとはいえないと書いています。逆に、セメンテッド式でも見た目だけウェルト風に作ったものがあります。
3.公式のスペック表を見る(これが確実)
結局これです。リーガルのように、公式オンラインショップが商品ごとに「製法」と「修理」を書いているブランドがあります。買う前ならここを見るのが一番早いし、確実です。
すでに持っている靴で表記が見つからない場合は、修理の受付窓口に型番を伝えて聞くのが確実です。「このモデルはオールソールできますか」と聞けば答えが返ってきます。

ソール交換にいくらかかるのか
「交換できる」だけでは判断できないので、実際の金額を出します。リーガル公式のリペア価格表(2025年3月1日現在・税込・左右両足分)から、紳士靴のオールソール(表底交換)です。
| 底の種類 | 価格(税込) |
|---|---|
| 合成ゴム底(意匠なし) | 21,450円 |
| 合成ゴム底(意匠あり) | 23,100円 |
| スポンジ底 | 23,100円 |
| クレープ底 | 23,100円 |
| 合成底(ヴィブラム・ダイナイトなど特殊) | 26,950円 |
| 革底 | 29,150円 |
ヒール替えは合成ゴムで6,050円、革積上げで7,700円。化粧替え(かかとの表面だけ)はトップリフトで3,300円です。シェットランドフォックスのオールソールは38,500〜49,500円になります。価格の確認先:リーガル公式サイト リペアページ。
つまり5万円の靴の底を1回替えると、2万円台から3万円弱かかります。これを2回やれば、本体代とほぼ同じです。「修理できるから結果的に安い」という話ではありません。
では何が得なのか。同じ木型で、同じ足なじみのまま履き続けられることです。買い替えると、慣らしからやり直しになります。リーガル公式も、オールソールについて「履き込んだ足馴染みはそのままに」と書いています。
もうひとつ、知っておくと安心な注意書きもあります。
グッドイヤーウエルト式製法の中底取替を伴うオールソール修理の場合、修理後の着用を考慮し、中底と甲革を留める掬い縫い位置を修理前とずらすことがあります。そのため、修理前と比べ、多少きつく感じられる場合もございますので予めご了承ください。
引用:リーガル公式サイト リペアページ
修理から戻ってきて少しきつく感じるのは、よくあることだと公式が説明しています。期間はソール交換で1〜2か月が目安と書かれているので、履く予定のない時期に出すのが良いと思います。
どこで差が出るか
1年目の履き心地
ここはマッケイとセメンテッド式が有利です。買った日から曲がるので、痛くなりにくい。グッドイヤーウェルトは最初が硬く、人によっては数か月かかります。
「本格靴を買ったのに足が痛い」で履かなくなるのが、いちばんもったいないパターンです。1足目でグッドイヤーウェルトを選ぶなら、慣らす期間がある前提で考えてください。
5年目以降
ここで逆転します。底が減ってきたときに、張り替えられる靴だけが残ります。
マッケイも1回は替えられるので、5年目の張り替えで10年は持ちます。ただ2回目は難しいので、そこで寿命が決まります。グッドイヤーウェルトはアッパーが生きている限り続けられます。
雨の日
意外に思われるかもしれませんが、底から水が入りにくいのはセメンテッド式です。縫い穴がないからです。だから防水の革靴はセメンテッド式が多くなります。
マッケイは縫い目が内側まで通っているので、構造的には不利です。グッドイヤーウェルトは底が厚く、ウェルトを挟んでいるぶん多少有利ですが、縫い糸が通っていることに変わりはありません。
この「防水と修理は両立しにくい」という話は、雨の革靴を調べていて一番驚いたところでした。詳しくは雨でも気にせず履ける革靴8ブランドで8ブランドを比べています。
見た目
コバが張り出すグッドイヤーウェルトは、重厚でがっしりした見え方になります。マドラス公式も「その重厚な感じは、他の製法では真似ることのできない特長」と書いています。
マッケイは細くすっきり見えます。スーツに合わせて華奢に見せたいならこちらです。上位モデルが両方を併用するのは、この見た目のためでもあります。
こういう人はグッドイヤーウェルト、こういう人はマッケイ
グッドイヤーウェルトを選ぶ人
- 同じ靴を10年以上履きたい
- ほぼ毎日スーツで、革靴の出番が多い
- 重さと硬さは慣れればいいと思える
- 修理に出すことを面倒がらない
マッケイを選ぶ人
- 軽い靴がいい。歩く距離が長い
- 買った日から痛くない靴がいい
- すっきりした細身の見え方が好み
- 1回張り替えて10年持てば十分
セメンテッド式で十分な人
- 革靴を履くのが週1〜2回
- 雨でも気にせず履きたい
- 数年で買い替えるほうが気が楽
- まず1足、安く試したい
どれかが上位ということはありません。履く頻度と、何年持たせたいかで決まります。

ほかにもある製法
お店で見かける範囲で、名前だけ知っておくと役に立つものです。説明はマドラス公式の記載に沿っています。
| 製法 | どんな靴に使われるか | 特徴 |
|---|---|---|
| ステッチダウン | カジュアルシューズ | 軽くて曲がるが、縫い目から水が入りやすい |
| プラット(カリフォルニア) | やわらかい靴 | 足あたりが良く弾力がある |
| ダイレクトインジェクション | ウォーキングシューズ、レインブーツ | 接着より強く、耐水性に優れる |
| モカシン | ローファー、デッキシューズ | 底付けではなく甲の作り方。足裏から包む形になる |
| ボロネーゼ | イタリア系の柔らかい靴 | これも甲の作り方。モカシンを上下逆にした構造 |
ダイレクトインジェクションは、長靴やワークブーツで見かけます。修理はできませんが、水には強いという位置づけです。製法名と寿命と防水性は、きれいに一列に並ばないということです。
モカシンとボロネーゼについては、ひとつ知っておくと納得できることがあります。この2つは底の付け方ではなく甲の作り方の名前で、マドラス公式はどちらも「多くの場合は、マッケイ製法で本底と甲部分が縫い合わされます」と説明しています。先の表に出てきた「セミマッケイ式(ハンドソーンモカシン)」という表記は、この組み合わせを書いたものです。ローファーが軽くて柔らかいのには、ちゃんと理由があるわけです。
よくある質問
グッドイヤーウェルトとグッドイヤー製法は違うものですか?
同じものを指しています。スコッチグレインの公式サイトは「グッドイヤー製法」と書き、リーガルは「グッドイヤーウエルト式」と書いています。このサイトの地の文では「グッドイヤーウェルト」で統一し、公式仕様を引用するときだけ公式の表記をそのまま使っています。
マッケイのソール交換は本当に1回だけですか?
マドラス公式は、甲革の縫い目の穴が増えると強度が足りなくなるため、オールソール修理は2回目以降はできないと説明しています。実際は靴の状態や修理店の判断によります。「2回目があるとは期待しない」くらいが現実的です。
セメンテッド式の靴は、底が減ったら捨てるしかないのですか?
メーカーの修理は受け付けてもらえないことが多いです。リーガル公式のスペック表にも「不可」と書かれています。街の修理店で底を貼り直す対応をしてくれる場合はありますが、元と同じ仕上がりにはなりません。買うときに「数年で使い切る靴」と決めておくのが気が楽です。
製法が書いていない靴は、買わないほうがいいですか?
そうとは言えません。ただ、書いていない靴はセメンテッド式だと考えて値段を判断するのが安全だと思います。修理できることを売りにできるなら、ふつうは書くからです。長く履く前提で買うなら、製法と修理可否が明記されているものを選んでください。
1足目はどれを選べばいいですか?
革靴を履く頻度で決めてください。週3回以上履くならグッドイヤーウェルト、週1〜2回ならセメンテッド式で様子を見るのが損しにくいと思います。マッケイは「軽い本格靴」が欲しくなった2足目以降で選ぶと納得しやすい製法です。
まとめ
- グッドイヤーウェルトは甲革と本底が直接つながっていない。だから何度でも張り替えられる。重くて硬いのは構造上の代償
- マッケイは甲革と本底を一緒に縫う。軽くて柔らかいが、張り替えは基本1回まで。水にも弱い
- セメンテッド式は紳士靴の約7割。軽くて安いが修理はできない。用途が合えば正解
- 上位モデルには「グッドイヤーウエルト+マッケイ式」という併用もある
- 持っている靴は中底のふちの縫い糸で見分けられる。買う前なら公式スペック表の「製法」と「修理」を見るのが確実
- グッドイヤーウェルトのオールソールは2万円台から3万円弱。安くはない。得なのは足なじみを捨てずに済むこと
製法を覚える目的は、専門用語に強くなることではありません。「この靴は何年つきあえるのか」を買う前に知るためです。それが分かっていれば、1万円台の靴も5万円の靴も、どちらも納得して買えます。
実際にどのブランドを選ぶかは、はじめての本格革靴はどのブランド?2〜5万円でソール交換できる5ブランドにまとめています。この記事で決めた「製法」の条件を持っていくと、候補がかなり絞れると思います。









